摂食障害、特に拒食症の状態では、特に身体的なケアを必要とします。
具体的には、生命の維持に必要な栄養の投与やバランスの取れた体内環境を整えるためのケアが行われます。
拒食症等で入院した際には、まずは飢餓状態や不健康なやせ状態から脱出し、生命の危険を取り除きます。
一般的に、入院をしたときには、この身体的ケアを中心に行うことが目的となります。
●栄養と判断力の関係
脳にも十分な栄養がいきわたらないと、思考力や判断力、コミュニケーション力などが低下していきます。
そのため、しっかりと栄養と取り、正常な判断が行えるようにすることが大切です。
ある程度、食事をきちんととり、正常な判断が行えるようになると、回復のための行動を選択しやすくなります。
●投薬はどのようなものがありますか?
摂食障害に直接効果がある薬品は、現在のところありません。
しかし、本人の心身の状態に合わせて、必要な投薬治療が行われます。
拒食症の身体的な危機(飢餓状態)を脱した後や、過食の状態では、特に精神的ケアを必要とします。
具体的には、精神療法(カウンセリング等)により、本人が抱え込んでいる悩みをほぐしていくケアが行われます。
また、本人が重荷に感じている物事への捉え方を変えるアプローチ(認知行動療法)なども有効であるとされています。
精神的ケアは、通院による治療や、カウンセリングサービスの利用、自助グループへの参加、家族等のかかわりにより行われます。
●本人の変化が必要
精神療法では、ただケアを受けさえすれば回復できる、というものではありません。カウンセリング等を通じて、「今まで言いたいけど、がまんしていて言えなかったことが言えた」「今まで気づかなかったけど、自分の中にこんな思い(怒り、不安…)があることに気づけた」といった発見や、小さな一歩を踏み出すことで、少しずつ回復に近づいていきます。本人が「今の状態を変えたい」という思いが回復のカギとなります。ですから、治療者は本人の応援団であり、すべての結果責任を治療者にだけ負わせることはできません。
回復を進めるためには、本人が自身の状態を把握し、人生を主体的に捉えようと思えることがコツだと考えられています。そのため、周囲の人たちは、その時が来るまで待っていてください。
●家族のかかわり方はどうすればいい?
家族やパートナーは、本人に近い存在だからこそ、強い支えにもなり、そしてもっともお互いに傷つけあう関係でもあります。
疲弊したときや、ヒントを得たいときは、家族で抱え込まずに、全国各地で開催されている「家族会」や「勉強会」に参加すると、きっと解決の糸口が見えるでしょう。
自分たちの無意識的なかかわり方の中に、本人が症状を手放すことができるヒントがあるかもしれません。
摂食障害が長期化したときは、社会的ケアを必要とします。
ただし、本人が年齢相応の社会生活を送っているときは、それほどケアを必要とはしません。
ですが、ひきこもりがちになったり、他者とのかかわり方がわからなくなっているときにはケアを受けることが大切です。
具体的には、就労のための施設に通ったり、自助グループに参加したり、キャリア支援を受けるといったことがあります。
社会的ケアは、身体的ケアや精神的ケアと並行して行われることもあります。
●ひきこもることの弊害
拒食症や過食症が重症化し、長期間、学校へ行ったり、働いたりできなくなったときには、コミュニケーション力が失われていきます。
例えば、人と会ったときに何を話せばいいのかわからない、外に出るときにどんな格好をすべきかわからないことをきっかけに、社会に対する恐怖と不安感が自らの中で増大していきます。
これは、本人の生活環境が、自宅と病院、スーパーやコンビニなどのコミュニケーションをそれほど要しない場所に限定され、また、会話する人も家族等に限られてくることに原因があります。
●無理に引っ張り出すのは逆効果
とはいえ、本人が望まない状態で無理やり外とかかわらせることは、極めて悪い影響を及ぼします。その場は頑張って乗り切ったとしても、後で反動が出て、今まで以上にふさぎ込んだり、症状がひどくなったりすることもあります。
本人が乗り越えられることから、徐々に外との関わりを増やしていくとよいでしょう。
●先輩とのかかわり
全国各地で開催されている自助グループでは、摂食障害を抱えた本人たちが集まり、自らの話をすることで互いに刺激を得、また気づきを得るようになっています。最初のうちは不安や怖さが先に出てなかなか参加することをためらいがちですが、あるとき決心して参加する日がやってきます。そこで同じ悩みを抱えている先輩と出会うことで、摂食障害とどのように向き合っていけばよいのかを知ることもできます。
そして、こうした狭い範囲でのかかわりを積み重ねていくことで、社会性が少しずつ回復していくこともできるはずです。